
💰 国会議員の歳費とは?現在の月額・年収・構成要素を徹底解説
そもそも「歳費」とは?給与や議員報酬との違い
国会議員の「歳費」とは、国会議員に対して国庫から支払われる給費を指します。これは、一般の国家公務員に支払われる「給与」や、地方議員に支払われる「議員報酬」とは法律上の性質が異なります。日本国憲法第49条では、「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける」と定められています。
歳費の法的性質については、議員の職務に対する「報酬」であるという説と、職務遂行上の出費を弁償したものであるという「費用弁償説」の対立があります。しかし、現行法制度では、国会法第35条で「議員は一般職の国家公務員の最高の給与額...より少なくない歳費を受ける」と規定されており、職務への対価である報酬としての側面が強いと解されています。
現在の国会議員の歳費はいくら?(月額と年間)
現在、国会議員(議長・副議長を除く)が受け取っている月額歳費は129万4,000円です。
これは「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(歳費法)」第1条によって定められています。この月額歳費を単純に12か月分として計算すると、年間の歳費総額は1,552万8,000円となります。この金額は、あくまで歳費(基本給)のみであり、後述する期末手当(ボーナス)や各種手当は含まれていません。
(参考リンク)国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(e-Gov 法令検索)
【早見表】議長・副議長・議員の歳費月額一覧
| 役職 | 歳費月額(現在) | 備考 |
| 議長 | 217万円 | 衆議院、参議院の議長 |
| 副議長 | 158万4,000円 | 衆議院、参議院の副議長 |
| 議員 | 129万4,000円 | 国会議員(一般) |
歳費はいつからいつまで支給される?(日割り計算の歴史)
歳費は、原則として議員がその任期を開始する日から支給されます。任期満了、辞職、死亡などの場合はその日までの歳費を受け取ることが歳費法に規定されています。
かつては、国会議員の任期が月の途中であっても、その月分の歳費が満額支給される仕組み(日割り計算をしない仕組み)があり、「2日間の在任で満額支給」といった問題が過去に発生し、大きな批判を浴びました。この問題を受け、2010年の歳費法改正により、月の初日以外に議員となった場合や月の末日以外に議員でなくなった場合は、月の現日数を基礎として日割りによって計算する仕組みが導入されました。
この日割り計算に関する規定は、歳費法第4条の2に盛り込まれており、2010年の法律改正によって導入されました。これにより、選挙直後の短期在任議員に満額支給されるという問題は是正されています。
(参考リンク)国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(法令リード - 改正履歴を含む)
📈 国会議員の歳費「月5万円アップ」調整の全貌:いつから、なぜ?
【速報】調整中の新歳費はいくらになる?(改定後の月額・年間)
自民党と日本維新の会が調整に入っている歳費法改正案が成立した場合、国会議員の月額歳費は現在の129万4,000円から5万円増額され、134万4,000円となる見込みです。
月額で5万円の増加となるため、年間に換算すると60万円の増加となります。この引き上げが実現すれば、1999年以来、26年ぶりの歳費引き上げとなります。
引き上げはいつから実施されるのか?次の国政選挙後への「先送り」の詳細
今回の歳費引き上げ調整で最も注目されているのが、その実施時期です。
「身を切る改革」を掲げる日本維新の会に配慮するため、引き上げ時期は次の国政選挙の後とする方針が盛り込まれる方向です。具体的には、歳費法改正案には以下のいずれかの早い日までは現行額で据え置くことが盛り込まれる予定です。
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参議院選挙が予定される2028年7月の末日
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衆議院解散がある月の末日
最短でも2年半以上先、つまり次の国政選挙が終わるまでは、引き上げは実施されないという「先送り」の方針が採られています。
なぜ今、歳費を引き上げるのか?3つの背景と政府の判断理由
国民生活が物価高に苦しむ中でなぜ歳費を引き上げるのかという疑問に対して、与党側は主に以下の3つの背景を理由としています。
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国家公務員給与の大幅引き上げ: 人事院勧告に基づき、国家公務員特別職の月額給与を引き上げる給与法改正案が今国会に提出されることを受け、これに合わせて歳費の扱いも検討されました。
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民間の賃上げの流れ: 2025年の春闘などで民間企業で大幅な賃上げが実現している社会全体の流れを踏まえ、引き上げが妥当であると判断されました。
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過去の最高額を下回る水準: 今回の引き上げ後の金額(134万4,000円)でも、実は過去最高額だった1999年(月額137万5,000円)には届かないため、「水準の是正」という意味合いもあります。
歳費の引き上げは、令和6年12月に成立した「特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律」による俸給月額の引き上げ(内閣総理大臣等が1.1%程度増)を受けたものであり、給与体系の均衡を保つための措置とされています。
(参考リンク)特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案の概要
過去の歳費はいくらだった?1999年の最高額水準と比較
国会議員の歳費は、1999年に月額137万5,000円を記録したのが過去最高額です。その後、財政状況や東日本大震災への対処などの理由で段階的に削減や据え置きが続き、2010年12月以降、現在の129万4,000円に落ち着いています。
今回の調整で目指す134万4,000円という金額は、この過去最高額よりも低い水準にとどまっています。議員歳費は2005年の歳費法改正で、特別職の給与増に合わせて自動的に引き上げられる仕組みが削除されているため、今回は改めて法律改正の調整が必要となりました。
💸 歳費だけじゃない!国会議員が受け取る総額報酬と各種手当の仕組み
国会議員の「年収総額」はいくらになる?(歳費+手当合計)
国会議員が実際に受け取る総額報酬は、基本となる歳費の他に、期末手当(ボーナス)や調査研究広報滞在費などの各種手当を含めたものになります。
歳費(年間約1,550万円)に期末手当(年間約635万円)、調査研究広報滞在費(年間1,200万円)などを合計すると、その総額は約3,000万円(厳密な計算方法により約4,000万円という試算もある)に達します。この総額が、一般に国会議員の「年収」として認識されることが多い金額です。
月額100万円支給される「調査研究広報滞在費」とは?(旧文通費)
調査研究広報滞在費は、国会議員が国政に関する調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動を行うために、月額100万円支給される手当です。かつては「文書通信交通滞在費」(略称:文通費)と呼ばれていましたが、名称が変更されました。
歳費法第9条により、この手当は非課税とされ、その支給を受ける金額を標準として租税その他の公課を課することができません。また、使途の報告書と領収書の写しを議長に提出し、公開する仕組みが導入されましたが、この使途報告のあり方や、残余の額の返還義務化など、運用の面で依然として国民からの厳しい目が向けられています。
公務員と同じ?国会議員に支給される「期末手当」(ボーナス)の計算方法
国会議員にも、一般の国家公務員などと同様に期末手当(ボーナス)が支給されます。
これは歳費法第11条の2に規定されており、毎年6月1日と12月1日(基準日)に在職する議員に支給されます。支給額は、基準日現在の歳費月額と、その歳費月額に一定の割合(現在は100分の45)を乗じた額の合計額に、特別職の職員の給与に関する法律に定める職員の例により算定した割合を乗じて得た額となります。年間で約635万円が支給されています。
国費で賄われる「公設秘書給与」や「その他特権」(JR特殊乗車券など)
国会議員には、上記の手当以外にも、国費で賄われる様々な費用や優遇措置があります。
最も大きなものが、公設秘書の給与です。議員は3人までの公設秘書を国費で雇用できますが、この秘書の給与(年間約2,000万円~3,000万円)は議員報酬の総額とは別枠で支給されます。
その他にも、歳費法第10条により、国政に関する職務遂行に資するため、JR全線の運賃・料金を支払うことなく乗車できる特殊乗車券(無料パス)の交付、またはそれに代えて航空券(年間一定回数)の交付を受けることができます。
💥「高すぎる」批判の核心:「身を切る改革」との矛盾と減額が難しい理由
国民が「給料が高すぎる」と感じる理由:一般国民との格差
今回の歳費引き上げ調整に対し、国民からは「物価高で国民生活が苦しい中、議員だけが優遇される」といった強い批判の声が上がっています。現在の月額129万4,000円という歳費だけでも、国民の平均所得と比べると非常に高水準であり、これに多額の手当が加わることで、一般国民との経済的な格差に対する不満が根強くあります。
また、議員の歳費から秘書給与や事務所運営費が支出されているという専門家の指摘もありますが、国民の目には「公務に対する実費ではなく、議員個人の収入」と映りやすく、「自分たちのことしか考えていない」という不信感が批判の核心となっています。
日本維新の会が掲げる「身を切る改革」と歳費引き上げの矛盾をどう考える?
今回の歳費引き上げ調整の実施時期が「次の国政選挙後」に先送りされたのは、「身を切る改革」を党是として掲げる日本維新の会への配慮があったとされています。
維新は議員定数の削減などを要求しており、「政治家が自らの既得権益を削って改革姿勢を示すべき」と主張しています。しかし、実施時期を先送りしたとはいえ、歳費引き上げの調整に協力・合意した形になったことで、国民からは「主張と行動が矛盾している」という厳しい指摘を受けています。一部の専門家からは、維新が主張する比例代表の議員定数削減は、都市部で強い維新自身へのダメージが少なく、「自分たちが痛まない改革」であるという指摘も出ています。
吉村代表は歳費増額に反対!維新内部の「報酬2割削減」措置とは
日本維新の会代表である吉村 洋文さんは、今回の歳費月5万円増の記事に対し、自身のX(旧Twitter)で「明確に反対」の意向を示しました。
吉村 洋文さんは、「維新として増額の調整にも入ってない」とした上で、「議員報酬を上げる前に国民の給与を上げよ」と訴えています。また、維新の国会議員だけが現在も「2割報酬削減」を実行していることを強調しており、党の方針と、自民党との調整の動きとの間で、見解の相違が表面化しています。
なぜ議員歳費の減額や見直しが継続的に難しいのか?(法的経緯と世論の板挟み)
議員歳費の減額や見直しが難しいのは、国会議員が法律(歳費法)によって自ら歳費を決める立場にあるためです。
過去には、財政状況の悪化や震災への対処を理由に歳費が削減された時期もありましたが、その後は元の水準に戻されています。議員が国民感情を考慮して歳費を据え置くことはありますが、恒久的な減額には「質の高い人材を政治の世界に招く妨げになる」という意見もあり、また、無報酬主義は貧困層の政治参加を妨げ、特定の支援者に依存する弊害を生むという歴史的教訓もあります。このように、「お手盛り」批判を避けたいという世論と、政治家としての活動資金の確保という現実的なニーズとの間で、常に板挟みになっている状態です。
歳費に関する国民の批判的な反応と専門家による賛否両論の意見
国民の反応は、Yahoo!ニュースのコメント欄などで見られるように、「自分たちの給料だけは上げるのか」「財源がないと言いながら議員報酬は上げるのか」といった強い批判が多数を占めています。
一方で専門家からは、擁護や冷静な意見も出ています。選挙コンサルタントの大濱崎 卓真さんは、歳費は個人報酬ではなく秘書給与や事務所運営費も含まれること、年間4.2億円の増加は一般会計予算の0.0003%に過ぎず財政影響は小さいことを指摘し、資金困窮が不適切な資金調達のリスクにつながりかねないと警告しています。また、政治学者の中北 浩爾さんは、日本は先進国の中で人口に対する国会議員の数が少なく、定数削減以外の方法も考慮すべきと述べています。
🌍 世界から見て日本の国会議員の報酬は適正か?国際比較ランキング
日本の国会議員報酬は世界何位?主要国の年収ランキング
東洋経済オンラインの調査などによれば、日本の国会議員の報酬総額(歳費、期末手当、調査研究広報滞在費などを含む)は、世界的に見ても高水準にあります。
基本給と主要な手当を合計した額で比較すると、日本は世界3位に位置するという試算もあります。
| 順位 | 国名 | 年間総額報酬(概算) |
| 1位 | シンガポール | 約9,000万円 |
| 2位 | ナイジェリア | 約5,000万円 |
| 3位 | 日本 | 約3,000万円 |
| 4位 | ニュージーランド | 約2,200万円 |
| 5位 | アメリカ | 約1,700万円 |
ただし、このランキングは、何を「報酬」に含めるか(秘書給与は含むか否か、手当の使途制限の有無など)によって順位が大きく変動するため、一概に「世界一高い」と断定するのは正確ではありません。
イギリスやアメリカの議員報酬は日本の歳費と比べてどう違う?
日本と政治形態が類似しているイギリスや、先進国であるアメリカの議員報酬と比較することで、日本の歳費水準が浮かび上がります。
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イギリス(下院議員): 基本給は約1,060万円で、手当(住居費、スタッフ人件費など)を含めた平均総額は年間約3,260万円程度とされています。
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アメリカ: 議員の基本給は年間約1,700万円程度ですが、秘書やスタッフの経費として数百万ドル単位の予算が別途支給され、これは実費精算されます。
日本の報酬総額は、これらの国々と比較しても高水準であり、特に歳費や調査研究広報滞在費の使途の透明性において、国際的な標準との差異が指摘されています。
【論点】議員報酬を削減しても財政的影響が小さいのは本当か?(年4.2億円の増加分析)
議員報酬を削減しても財政全体への影響は極めて小さいという専門家の意見は事実に基づいています。
衆議院と参議院の全議員(713名)の歳費を月5万円引き上げた場合、年間で国庫から支出が増える額は約4.2億円となります。これは、一般会計予算(約115兆円)と比較すると、わずか**0.0003%**に過ぎません。したがって、「議員報酬を削っても財政再建は進まない」という主張は経済学的に正しい側面を持っています。しかし、国民の批判の焦点は財政的な影響の大小ではなく、「国民生活が苦しい中での政治家の姿勢」に向けられているという点で、この議論は単なる金額の問題にとどまらない複雑な政治的課題となっています。
適切な議員報酬とは?質の高い人材を確保するための議論と課題
「適切な議員報酬」とは何かという問いは、民主主義のコストに関する本質的な議論です。
報酬が低すぎると、経済的な基盤がない市民が立候補しにくくなり、結果として政治の世界に裕福な層しか入れず、多様な国民の意見が反映されないという問題が生じます。また、優秀な人材を他の高所得な職業(民間企業、法曹界など)から政治に引き込むためには、一定程度の報酬が必要であるという意見もあります。このため、報酬は「お手盛り」と批判されない透明性と、政治家として活動を維持できる妥当性のバランスを取る必要があり、このバランスこそが現代の民主主義が抱える大きな課題の一つとなっています。

